真空成形トレーとは?
仕組み・特徴と部品に合う選び方
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【この記事でわかること】
- 真空成形トレーの仕組みと射出成形との違い
- 部品の搬送・保管に使うメリットと注意点
- 部品や使用環境に合う材質・発注方式の選び方
真空成形トレー(真空成型トレー)は、加熱して柔らかくしたプラスチックシートを型に密着させて作る、部品の搬送・保管用トレーです。個別の形状に合わせたくぼみ(ポケット)で1点ずつ固定できるため、部品同士の接触やキズを防ぎたい現場で幅広く活用されています。
ただし、図面の寸法だけでトレーを選んでしまうと、「現場で部品が取り出しにくい」「積み重ねたときに部品に干渉してしまう」といったトラブルにつながることもあります。この記事では、真空成形トレーの仕組みや他の工法との違いを整理したうえで、現場で本当に使いやすいトレーを選ぶための着眼点や、発注前に確認しておきたいポイントをアドバイスします。
真空成形トレーとは
真空成形は、熱を加えると柔らかくなる熱可塑性樹脂のシートを使う成形方法です。加熱したシートと型の間から空気を抜き、大気圧によってシートを型へ瞬時に密着させます。その後、冷却して形状を安定させ、トレーの形に仕上げます。
なお、「真空」という名称は、シートと型の間の空気を抜く成形工程を指しています。食品の真空パックのように、完成したトレーの中を真空状態に保つという意味ではありません。
部品トレーでは、部品を収めるくぼみを「ポケット」と呼びます。対象となる製品の寸法や外形に合わせてポケットを設けることで、輸送中や保管中に部品が動く範囲を最小限に抑えます。電子部品や自動車部品、精密機器など、収納する部品のデリケートさに応じて、ポケットの形状や材質を適切に選定することが大切です。


真空成形トレーができるまで
製造の流れを把握しておくと、サンプルの確認時や仕様検討時のチェックポイントがわかりやすくなります。基本的な製造の流れは、シートの加熱、成形、冷却、トリミング、検品の5工程です。
- 樹脂シートを加熱して、型に沿って均等に伸びる状態にします。
- シートと型の間の空気を瞬時に抜き、型の形状に密着させます。
- 成形したシートを冷却し、形状をしっかりと固定します。
- トリミング工程で不要な外周を切り落とし、トレーの外形寸法を整えます。
- 外観のキズや寸法精度、部品との収まり具合を検査します。
完成品やサンプルを確認するときは、ポケットの内寸だけでなく、外周のトリミング切断面に部品や作業者の手が触れる箇所がないかも見ておくと安心です。図面上の確認だけで終わらせず、実際の現場で部品を出し入れして使い勝手を確かめてみてください。
当社の製造工程は、製造プロセス・品質管理体制をご覧ください。
射出成形との違い
プラスチック成形の代表的な工法である真空成形と射出成形では、使用する原料の形状と、型に合わせて成形する方法が大きく異なります。
| 比較項目 | 真空成形 | 射出成形 |
|---|---|---|
| 成形前の材料 | シート状の樹脂 | 粒状の樹脂(ペレット) |
| 形状を作る方法 | 加熱したシートを型に密着させる | 溶かした樹脂を金型内部へ圧力をかけて充填する |
参考:東大阪市技術交流プラザ「射出成形(インジェクション モールド)」
成形方法を選ぶ際は、工法そのものの違いだけでなく、必要な製品形状やロット数を伝えて見積もりを比較することをおすすめします。高圧で樹脂を充填する工法は頑丈で複雑な立体を作れる反面、高額な金型製作費がかかる傾向があります。一方の真空成形は、型の構造が比較的シンプルで初期費用を抑えやすく、薄手で軽量な部品トレーの量産に適しています。新規の型製作が必要かどうかも含めて、初期の型代と製品1枚あたりの単価を合わせた総費用で比較すると、予算に合う調達がしやすくなります。
部品の搬送・保管に真空成形トレーを使うメリット
部品をポケットごとに独立して収められるため、接触を避けたい箇所を保護したり、作業時の向きを統一したりできます。また、寸法の合う規格品を活用できれば、新規の金型を作らずに導入コストを抑えられるのも大きな利点です。
部品同士の接触防止と向きの統一
部品を個別のポケットに分けて収めると、通い箱などへまとめて入れる「バラ積み」と比べて、部品同士がぶつかり合ってキズや変形が生じるのを防ぎやすくなります。専用のくぼみで外周や底面をしっかりと保持すれば、搬送中の振動で動く範囲も最小限に抑えられます。
トレー選定のアドバイスとして、傷を付けたくない面や突起がある部品では、「どこで支えて、どこを浮かすか」の逃げ構造を確認しておくことをおすすめします。外寸だけでポケットを選ぶと、保護したい重要な面がトレー底面に擦れたり、奥まで入りすぎて取り出しにくくなったりすることがあります。
また、組立ラインで部品の向きをそろえて次工程へ受け渡したい場合は、収納する姿勢と取り出す方向をセットで検討しましょう。作業者が指でつまみ上げる手作業なのか、自動機(ロボットハンドや吸着ノズル)による自動ピックアップなのかによっても、必要なクリアランスや指入れ用のくぼみ設計が変わってきます。実際の作業環境を想定してサンプルを試すと、失敗のない選定ができます。
規格品の利用による金型費の削減
規格トレーは、あらかじめメーカーが保有している金型を使って製造するトレーです。当社の規格トレーをご利用いただく場合、既存の金型をそのまま使うため、お客様に新規の金型製作費をご負担いただく必要がありません。
この場合の「金型費不要」は、型を使わずに製造するという意味ではありません。すでにある豊富なポケット形状や寸法ラインナップの中から、お客様の部品に合うものを選んで利用する仕組みです。

初めて部品トレーを導入される場合は、まず部品に適合する規格品がないか探してみることをおすすめします。ぴったり合うものが見つかれば、型の製作費用や設計期間をかけることなく、スピーディーかつリーズナブルに導入できます。ただし、選択する材質やロット数によって製品の単価や納期は変わるため、必要な条件をそろえて見積もりを比較してみましょう。
製品の種類は、規格トレー一覧をご覧ください。
真空成形トレーを選ぶ前に知っておきたい注意点
真空成形では、平らなシートを引き伸ばして立体的なポケットを作ります。そのため、成形前のシート厚だけで完成品の強度を判断してしまうと、現場で強度不足に悩まされる原因になります。必ず部品を入れた実使用の状態で確認することが大切です。
成形後の厚みのばらつき
成形前のシートが均一な厚みであっても、型に沿って伸ばされた後の厚みは一様にはなりません。特にポケットの底面や四隅の角部分はシートが引き伸ばされて薄くなりやすいため、シートの元厚だけでなく、「成形後に部品を支える部分へ十分な厚みが残るか」を確かめる必要があります。
参考:国立特別支援教育総合研究所「真空成型法による立体教材作製ガイド」(2009年10月改訂版)
特に、重量のある部品を載せる場合や深さのあるポケットを設計する場合は、底面やコーナーの厚み不足によるたわみや割れが起きないか、試作品で必ず確認しておきましょう。
なお、深いポケット形状で厚みを均一に保ちたい場合は、成形時に補助治具でシートをあらかじめ押し込む「プラグアシスト成型」も検討できます。当社でも対応している工法です。収めたい製品の形状や必要な深さをご相談いただければ、最適な成形方法と材質をご提案いたします。

出し入れ・段積み時の使いやすさ
図面上で部品が綺麗に収まっていても、実際の現場で出し入れや搬送がスムーズに行えるかは別に確認しておく必要があります。サンプルを手配したら、実際の部品を収めて「ガタつきが大きくないか」「作業時に引っ掛からないか」「持ち上げたときにトレーがたわまないか」を確かめましょう。
また、トレーを何段も積み重ねて運ぶ場合は、上のトレーの底面が下の部品に当たって負荷をかけていないか、積み重ねた全体の重みで最下段のトレーが変形しないかも確認します。使い捨てではなく工程間で繰り返し使う場合は、出し入れの頻度や洗浄の有無も事前にメーカーへ伝えておくのがポイントです。使用条件を詳しく共有していただくことで、耐久性に配慮したリブ形状や材質を一緒に検討できます。
真空成形トレーの主な材質と選び方
トレーの材質は、視認性(外観の確認しやすさ)、熱や薬品への耐性、静電気への対策など、現場の使用環境に合わせて選びます。当社の部品トレーで主に取り扱っている代表的な材質は、A-PET、PS、PPです。A-PETは非結晶性のポリエチレンテレフタレート、PSはポリスチレン、PPはポリプロピレンを指します。
| 材質 | 選ぶ際の着眼点 | 検討する用途 |
|---|---|---|
| A-PET | 透明性が高く、部品の状態を目視で確かめやすい | 収納した状態で外観を確認したい部品 |
| PS(N) | 加工性やコストを踏まえて検討する | 一般部品の搬送・保管 |
| PP(N) | 耐薬品性・耐熱性が求められる場合の候補になる | 薬品や熱の影響を受ける工程で使う部品 |
例えば、部品洗浄後の工程で使うトレーであれば、付着する薬品の種類や乾燥時の温度を伝えて適合性を確認します。「PPならどの薬品でも大丈夫」と安易に判断せず、現場の使用条件に適合する材質とグレードを選ぶことがトラブル防止につながります。
また、電子基板や半導体部品など静電気を嫌うデリケートな部品には、導電性シートや帯電防止シートなどの特殊材料を検討します。同じPSやPPであっても、標準グレードと導電・帯電防止グレードでは電気的な性能が大きく異なります。樹脂名だけで判断せず、現場で求められる抵抗値や対策レベルをしっかり確認したうえで選定しましょう。
対応する材質や厚み、特殊シートは製品ごとに異なります。詳しくは、対応材質・性能比較表をご覧ください。
真空成形トレーを発注する前に確認したいこと
トレーを選定・発注する際は、部品の寸法・重量・必要数量に加えて、搬送や保管の環境をあらかじめ整理しておくとメーカーとの相談がとてもスムーズになります。そのうえで、安価な規格品で対応できるか、専用の寸法や形状が必要かを見極めていきます。
相談前にそろえておきたい部品・現場の情報
メーカーへ問い合わせる前に、図面や現物とともに次の情報を整理しておくことをおすすめします。
- 部品の縦・横・高さ、重量、傷を付けたくない箇所
- トレー1枚に収めたい部品の個数と、収納時の向き
- 使用する外箱や通い箱・コンテナの内寸、段積みの段数
- 手作業や自動機など、部品の出し入れ方法
- 温度、薬品、油分、静電気など、使用環境に関する条件
- 初回の必要数量、今後のリピート見込み、希望納期
もちろん、最初からすべての仕様を完璧に決めておく必要はありません。当社では、部品の外寸と概算の数量をお知らせいただければ、概算見積もりをご案内するとともに、サイズ感や材質を比較できるサンプルのご相談も承っています。
サンプルや見積もりについては、よくある質問もご覧ください。
規格品・セミオーダー・フルオーダーの選択
発注方式は、「規格品 → セミオーダー → フルオーダー」の順に部品が収まるかを確かめながら選ぶと、コストと手間のバランスを最適化しやすくなります。当社では、規格品で寸法が合わない場合のセミオーダーや、一から専用で形状を設計するフルオーダーにも柔軟に対応しています。
| 発注方式 | 選び方 | 金型の扱い |
|---|---|---|
| 規格品 | 既存の寸法・形状から選ぶ | 既存金型を使用し、金型費は不要 |
| セミオーダー | 対応範囲内でポケット寸法を指定する | 新しい金型を作り、製作費は当社が負担 |
| フルオーダー | 部品に合わせて形状・寸法などを設計する | 新規金型の製作費が必要 |
セミオーダーは、「規格品では少しポケット寸法が合わないが、金型代はかけたくない」という場合に適した選択肢です。初回発注は2,000枚からで、納品後の金型は当社の規格トレーとしてラインナップされる条件となります。金型費が当社負担になるメリットだけでなく、発注ロットや金型の扱いも含めてご検討いただくのがポイントです。
指定できる寸法や形状は、セミオーダートレーをご覧ください。
特殊な部品形状で複雑な保持が必要な場合や、独自の段積み機構・自動機搬送に合わせたい場合は、フルオーダーが有力な候補になります。仕様によって費用や納期が変わるため、部品図面や現場の運用条件をもとに設計段階からじっくり検討することをおすすめします。
専用設計については、フルオーダートレーをご覧ください。
真空成形トレーの選定とサンプルのご相談
真空成形トレーは、プラスチックシートを型に沿わせて部品ごとのポケットを作ることで、部品を安全かつ効率的に保護・搬送できるトレーです。寸法の合う規格品を上手に活用できれば、新規の金型製作費をかけずにスピーディーに調達できます。
最適なトレーを選ぶためには、部品の外寸だけでなく、キズを防ぎたい面、作業時の取り出しやすさ、段積み時の負荷や使用環境まで一つひとつ確認しておくことが肝心です。図面だけで決めず、事前にサンプルを取り寄せて実際の部品を出し入れしてみることで、現場にフィットする形状や材質を具体的に絞り込めます。
ジャパン・プラスでは、豊富な規格トレーの選定から、金型費ご負担なしのセミオーダー、自由度の高いフルオーダーまで、お客様の現場に合わせたご提案を承っています。検討中の寸法や概算の必要数量をお気軽にお知らせください。用途にぴったりのトレーと、サンプル・概算見積もりをご案内いたします。