医療機器の梱包材はどう選ぶ?
滅菌包装との違いと輸送時の注意点
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【この記事でわかること】
- 医療機器の輸送・保管用の梱包と、滅菌状態を保つ包装の違い
- 衝撃、汚れ、静電気への対策を検討するときの確認事項
- 医療機器の部品に合うトレーの選び方と、発注前の評価方法
医療機器の梱包材を選ぶ前に、機器や部品のどこを支えるか、輸送・保管中にどの品質を守るかを決めておくと、資材を選びやすくなります。守るべき品質は傷や変形だけではありません。製品によっては清浄度や静電気への配慮が必要になり、滅菌した状態で出荷する製品なら、無菌性を保つ包装の要件もかかわってきます。
必要な梱包は、完成品を出荷するときと、製造工程で部品を運ぶときで異なります。まずは使う場面を整理し、トレー、緩衝材、外箱にそれぞれどの役割を持たせるかを考えてみてください。
医療機器の梱包と滅菌包装の違い
輸送中に製品を守ることと、滅菌した状態を保つことは、分けて考える必要があります。部品が動かないように収めても、それだけで無菌性を保てる包装にはなりません。
| 梱包材・包装 | 主な役割 | 選定時に確認すること |
|---|---|---|
| 部品トレー | 部品の位置や向きを保ち、接触を避ける | 寸法、支える面、取り出しやすさ |
| 緩衝材・外箱 | 輸送中の衝撃や荷重への対策 | 輸送時の状況を再現する試験 |
| 滅菌包装 | 滅菌した製品の無菌性を保つ | 包装の健全性、滅菌方法との適合性 |
輸送・保管中の品質を保つための要件
医療機器の梱包では、外観を守るだけでなく、使うときに必要な特性や性能を保つことが大切です。厚生労働省の医療機器の基本要件基準では、製造販売業者などが指示した条件で輸送・保管し、意図された方法で使ったときに、特性や性能が落ちないよう設計・製造・包装することを求めています。滅菌して出荷する製品には無菌の状態を、滅菌せずに出荷する製品には所定の清浄度を保つ包装も定めています。
参考:厚生労働省「医療機器の基準(平成17年厚生労働省告示第122号)」第5条・第8条
そのため、梱包を考えるときは、製造販売業者が定めた輸送・保管条件を最初に手元へそろえておきましょう。温度や湿度、積み重ね方が分かっていれば、それに耐える材質や外箱を選びやすくなります。部品のどこを支え、どこに触れてはいけないかは、図面や現品をもとに別途決めておく必要があります。
滅菌済み製品と工程内で運ぶ部品の包装の違い
滅菌済みの医療機器には、微生物が入り込まず、使うまで無菌の状態を保てる包装が必要です。包装が破れたり開いたりしないか、シール部分が傷まないか、滅菌方法に合う材質か、包装の工程が妥当かは、製造販売業者などが製品ごとに確かめる必要があります。
一方、工程内で部品を運ぶトレーに求められるのは、傷を付けずに保持できるか、定められた清浄度を保てるかです。トレーを滅菌包装の内側に入れるのか、包装済みの製品を外側から支えるのかによっても求められる条件が変わるため、選ぶ前にはっきりさせておきましょう。
なお、当社の医療機器向け部品トレーは、部品の搬送・保管に使う用途を対象としています。人体に直接触れる用途は対象外です。滅菌包装の一部として使いたい場合は、搬送用トレーとして使えるかとは別に、材質や包装全体の要件も確かめてください。
医療機器を梱包するときの注意点
梱包材の選び方は、製品のどこが壊れやすいか、どのような環境で運ぶかによって変わります。部品が動かない支え方、汚れを持ち込まない扱い方、電子部品の静電気対策の3点を、用途に合わせて検討しましょう。
衝撃や振動を抑える部品の支え方
梱包の中で部品が動くと、隣の部品や容器に当たるおそれがあります。突起や細い軸、コネクタなどがある部品では、その部分に力が集中しない支え方が大切です。支え方を考える前に、寸法だけでなく、重さや重心、触れてよい面を図面や現品で確かめておきましょう。
例えば細い突起がある部品なら、突起の先で受けるより、本体を支えて突起の周りに空間を残す形を検討してみてください。
- 突起の先で受ける形では、揺れたときの力が細い先端に集まります。
- 本体を支えて突起の周りを空ける形なら、力を本体側で受けやすくなります。
図のように、同じ部品でも、どこで受けるかによって力のかかる場所が変わります。ただし、どの形が合うかは部品の強度や搬送条件によって違うため、最終的な形は試作品での評価を経て決まります。
また、トレーで部品の位置を決めることと、緩衝材で輸送中の衝撃を吸収することは別の役割です。外箱の中でトレーごと動かないか、積み重ねたときに上のトレーが部品に当たらないかは、トレー単体では分かりません。外箱に入れて積み重ねた状態で確かめる必要があります。

J1-BOXは、医療器具や精密機器の輸送・梱包にも対応するフィルム緩衝材です。上下の特殊フィルムで内容物を挟み、箱の中で浮いた状態に固定して、輸送中の振動や衝撃から守ります。採用前には、機器の形状・重量や輸送条件に合わせて保護性能を確かめる必要があります。
写真は、カメラレンズと管楽器を保持した例です。
異物や汚れの付着を防ぐ梱包と取り扱い
清浄度が求められる用途では、梱包材に付いた汚れに加えて、使っているうちにこすれて出る粉や、切り口から出る粉にも注意が必要です。ふたや袋の有無に加えて、受け入れ後にどこで開封し、どう保管し、どの手順で部品を載せるかも決めておきましょう。扱い方を決めておくと、資材を替えるだけでは防ぎにくい汚染の原因も検討できます。
また、部品を1つずつ袋に入れることと、滅菌包装をすることは同じではありません。袋に入っているというだけでは、無菌かどうかも、クリーンルームで使えるかどうかも判断できません。必要な清浄度とその確かめ方は、社内の品質管理の担当者と梱包材の供給元とで共有しておいてください。
電子部品に必要な静電気対策
センサーや基板など静電気の影響を受けやすい部品には、帯電防止性や導電性のある材質も候補に入れましょう。一般的な透明トレーを選んだだけでは、静電気対策の仕様を満たすとは限りません。
当社では、A-PET(非結晶性のポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)を基材にした帯電防止シート、導電性A-PETなどの特殊シートに対応しています。ただし、使える材質はトレーのシリーズによって異なります。ご相談の際は、静電気をどの程度抑えたいかと、その評価の方法を先にお知らせください。候補の材質の仕様と照らし合わせながら、一緒に検討します。

静電気への対策が必要な部品には、帯電防止仕様のトレーを検討します。写真は、帯電防止PPのシートを成形した当社の医療機器向けトレーです。区切られたポケットが並んでいます。
医療機器の部品に合うトレーの選び方
トレーを選ぶときは、部品が入るかどうかだけでなく、載せたときに安定するか、取り出しやすいか、工程に合うかも見ておきましょう。透明かどうかだけで決めず、洗浄や静電気対策など、実際の使い方で必要になる性能も洗い出しておくことが大切です。

部品の形に合わせて、丸形や長方形などのポケットを選べます。

外寸だけでなく、部品を支える位置や出し入れのしやすさも確かめておきましょう。
写真は当社の部品トレーの形状例です。色や外観だけでは、材質や静電気対策の仕様は判断できません。部品トレーの製品一覧を見る
部品に合うポケット寸法と取り出しやすさ
ポケットとは、部品を入れるくぼみのことです。縦・横・深さに加えて、部品を載せたときに位置や向きが安定するかを確かめてください。すき間が大きすぎると部品が動きやすく、狭すぎると出し入れのときに部品に力がかかるおそれがあります。
サンプルで試すときは、手袋をした手や実際に使う治具で取り出せるかも試してみてください。部品が底に収まるかだけを見ていると、つかみにくさや、取り出すときに部品が周りに当たることに気づきにくくなります。搬送用コンテナに収まる外寸か、部品を載せたまま積み重ねられるかも、サンプルがあればその段階で確かめられます。
目視検査・洗浄などの工程に合う材質
トレーに載せたまま部品の有無や向きを目で確かめたいなら、透明性の高いA-PETが候補になります。当社でも、精密機器・医療機器向けトレーにはA-PETを基本の材質としてご提案しています。細かな傷や異物まで検査したい場合は、実際の照明と部品で、どこまで見えるかを試しておきましょう。
主な材質と、検討する場面は次の表のとおりです。
| 材質・仕様 | 検討する場面 | 選定時の確認事項 |
|---|---|---|
| A-PET | 部品の有無や向きを目視で確認する工程 | 見え方、必要な強度、部品との接触状態 |
| PS(ポリスチレン) | 一般部品の搬送・保管 | 保持形状、強度、数量に応じた費用 |
| PP(ポリプロピレン) | 薬品に接する工程や耐熱性を求める用途 | 薬品の種類・濃度、温度、接触時間 |
| 帯電防止・導電性の特殊シート | 静電気への配慮が必要な電子部品の搬送 | 帯電防止・導電性の仕様、品番ごとの対応可否 |
耐薬品性や耐熱性は、材質の名前だけでは判断できません。実際の使用条件と候補品の仕様を照らし合わせてください。特に滅菌工程がある用途では、PPなどの樹脂名だけを理由に、その滅菌方法に使えると考えないことが大切です。
材質ごとの性能は、対応材質・性能比較表で比べられます。
規格品とオーダー品の寸法・数量・費用の違い
既存のポケットで部品が安定するなら、まずは規格トレーから探すのがおすすめです。当社には200種類以上の規格トレーがあり、既存の金型を使うため、お客様に金型製作費はかかりません。規格品は50枚から発注でき、経済ロットは250枚からです。
規格品の寸法が合わないときは、セミオーダーという方法もあります。外寸は2種類から選び、ポケットは5mm刻みの四角形か円形、深さは5mm単位で5~30mmの範囲から指定できます。新しく作る金型の製作費は当社が負担しますが、初回ロットは2,000枚です。なお、納品後の金型は当社の規格トレーとなります。
特殊な形状のときや、決まった位置で部品を支える設計が必要なときは、フルオーダーをご相談ください。形状・寸法・材質を個別に設計する方式で、金型製作費は別途かかります。発注枚数は仕様に応じてご相談いただけます。
どの方式にするかは、規格品に収まるか、部品をどこで支える必要があるか、何枚必要かの3点で考えると絞り込めます。
- まずは、既存の規格トレーで部品が安定するかを確かめましょう。
- 合わなければ、外寸とポケットがセミオーダーの範囲に収まるかを見てみましょう。
- 範囲外の形や支える位置の指定があればフルオーダーです。最初の枚数も方式で違います。
規格品が合わないときは、すぐにフルオーダーと決めず、外寸とポケットがセミオーダーの範囲に収まるかを先に確かめてみてください。収まれば、お客様の金型製作費の負担はありません。ただし初回は2,000枚からで、リピートは50枚から発注できます。必要な枚数と合わせて判断しましょう。
梱包材の採用前に確認する輸送試験と作業性
梱包材を採用する前には、部品そのものだけでなく、トレー、緩衝材、外箱を組み合わせた梱包全体を評価しておきましょう。評価の条件と合否の基準を先に決めておけば、輸送後に外観や、製品に必要な機能・性能が保たれているかを判断しやすくなります。
トレー・緩衝材・外箱を組み合わせた輸送試験
輸送試験では、製品をトレーに載せ、緩衝材や外箱を含めた梱包全体を評価します。製品の特性と輸送経路に合わせて、衝撃、振動、積み重ねたときの荷重、温湿度など、確かめる項目を決めましょう。試験条件と合否の基準は、社内の品質管理の担当者や試験機関と相談して設定します。
試験後は、外箱の破損だけでなく、中の部品のずれや傷、製品の機能・性能への影響まで確かめてください。
出し入れのしやすさと繰り返し使う場合の注意点
現場での使いやすさは、載せる、運ぶ、検査する、取り出すという一連の作業を通してみると分かります。部品の向きを見分けられるか、数を数えやすいか、取り出すときに部品に触れすぎないかは、現場で作業する人に使ってもらうと課題が見つかりやすくなります。
繰り返し使うなら、洗浄の方法や使う回数を想定した評価も必要です。傷や変形、汚れが残るといった交換の目安も、先に決めておきましょう。再使用できるかどうかや洗浄の条件は、トレーと用途によって異なります。
医療機器の部品トレー選びはジャパン・プラスへご相談ください
「部品に合う規格トレーが見つからない」「搬送中に部品が動いてしまう」とお困りでしたら、当社へご相談ください。部品の寸法・形状と使う工程を伺い、搬送・保管に使うトレーをご提案します。ご相談の際は、次の情報をお知らせいただくと、形状や材質を検討しやすくなります。
- 部品の図面または現品、縦・横・高さ、重量
- 触れてよい面、傷や負荷を避けたい部分、保持したい向き
- 工程内の搬送、保管、完成品の出荷などの使用場面
- 必要な清浄度、静電気への対策、洗浄・滅菌を行う工程の有無
- 搬送用コンテナや外箱の寸法、積み重ね方、輸送・保管条件
- 初回と継続発注の数量、希望納期、使い捨てか繰り返し使用か
規格トレーで足りるのか、セミオーダーやフルオーダーが必要なのか迷っている段階でもご相談いただけます。用途に合う仕様を一緒に検討します。
対応する用途や仕様は、精密機器・医療機器向けトレーをご覧ください。